![]() | そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生 (2007/08/23) 横石 知二 商品詳細を見る |
タイトルだけ見るとマリファナ売って生計立ててるチンピラが思い浮かぶが(私だけだろうか)、ここで売られる葉っぱは「料理のつまもの」である。高級料亭で季節を表し、料理を飾る南天・紅葉・ふきのとうの芽。……なーんて説明はおそらく不要、メディアに取り上げられること年間180回を超える地方再生の希望の星、徳島県上勝村のお話である。
私の仕事は地方の商工会で「ビジネスアイデア発想法」というセミナーをやることだが、最後の方でよく「結局は“人の力”」という話をよくする。どんな最新機器を使っても、すんばらしいアイデアが浮かんでも、「やりぬく人」がいなければ保守的な地域は特に変われない。
この村には、葉っぱビジネスを立ち上げて現在に至るまで粘りに粘った「人」がいる。
それが著者の横石知二さんだ。
たいてい、こういう己の成果を己で書くと自慢臭が漂い続けるのだが、この人に限っては「まだ本出してなかったの!」と思うぐらい遅く、そして中身には地方再生・福祉・女性の活用・モチベーションの上げ方・ビジネスアイデアが詰まっている。
「つまものの仕入先を調べるために、自腹で2年料亭通いをした」とさらっと書き飛ばす。しかし、この「2年」ができない人が世の中の8割を占めている。
そして、ほぼ30年近く、最初に農協の指導員として派遣された先の上勝町と心中覚悟で仕事をしている。そのハードワークっぷり、心臓にステントを埋めこんで彼は手描きのFAX通信を送り、常に新しい仕組みを取り入れようと今も奮闘している。
自分の故郷ならともかく。
ただ配属された先で。
しかも月給は20万円以下。
親と妻のすねかじりで自腹で料亭通い、仕事に打ち込んで家庭を顧みない男は「社会人」としてやはりどこか欠落しているだろう。でも、彼が救った人や家族はどれだけいただろうか。
お婆さんの稼ぎで家が建つ。
病気で寝込んでる暇に他のバーさんに負けてしまうと、さっさと病院を出てくる。
みんな元気、足腰丈夫。
視察で料亭に連れて行ってもらい「寄り合いはオトウチャンばっかりやったから」と外出を心から喜ぶ女性たち。ホンモノに触れることで、センスが良くなり商品と身なりが整ってくる。日本の片隅に魔法がかかる。たった一人の“仕事バカ”のおかげで。
葉っぱビジネスが軌道に乗ったころ、さすがにこの給料ではやっていられないと横石さんが辞表を出すエピソードが最大の山場だ。翌朝、上勝村の女性たちから届けられた「嘆願書」。
「横石さんの才能で一枚の葉も売れた、皆喜んだ、上勝に絶対必要な人です」
「心の恋人、消えないで下さい、お願いします」
行かないで辞めないでと袖を引くのは彼によって人生を取り戻した婆さん達。
拙い、でもあまりにも切実な言葉。
横石さん、大泣き。
セミナーに向かう新幹線で読んでた私、大泣き。
あぁやっぱり人なんだ人。
地方の商工会や中小企業で「あなたがその『人』になってほしい」と呼びかけるのが私の仕事。行った先に思いはあるが、外部からコンサル入れたって絶対に成功しない。
情報収集を怠らず、瞬発力と持続力を兼ね備え、コミュニケーション能力が高い人。
都会で中途半端な仕事をするより、地方で能力を発揮するのも選択肢の1つだ。
泥だらけで傷だらけのスーパーマンが書いた本だが、「あの人は特別」とは言い切れない。
触発される「人」が地方に多く生まれることを願っている。


